筋トレが動きに繋がらないもう一つの理由
ここまでで、筋肉が単に太く強くなるだけでは、動きやすい体に繋がらないこと理由を解説してきました。
もう一つ、考慮すべきことがあります。
それは「人間の動きは、一つの筋肉のみで起こすことができない」のです。
前述の通り、筋肉は関節をまたいで付いており、筋肉を縮めると関節が動きます。
ただし人間が動くときには、全身の多くの筋肉が同時に(あるいは適切な順序で)働いています。
これをNASMはForce Couple(フォースカップル)と表現しています。
上の図は、フィットネスジムによく置いてあるラットプルマシンをする様子です。
上に吊るされた棒を引き下げるトレーニングですが、大体のマシンには「『広背筋』を使うマシンです」と書いてあります。
しかし、実際には広背筋以外にこれだけの筋肉が、肘を下に引く動きに関わっています。
あるいは上の図は、野球の投球の場面です。
股関節や体幹を捻る動きはピッチングに関わらずバッティングやゴルフスイング、格闘技のパンチなど多くのスポーツで見られます。
その際に働く筋肉の組み合わせは、腹斜筋という腹筋の一部と、内モモにある内転筋です。
このような組み合わせは適当ではなく、既に研究によって明らかになっています。
ここまで話すと、一つひとつの筋肉を単体で鍛えることが、どれだけ動きやすい体づくりに非効率であるかが分かりますね。
有名な話です。
ボート選手へのトレーニング指導で、「オールを引く動きを鍛えれば競技成績が上がる」と思い、ケーブルを引くトレーニングを沢山指導しました。
その際、「広背筋を意識して引いて!」と指導し続けていたら、いざボートの練習をした際に「いつもより広背筋を使いすぎてしまった」とタイムが落ちてしまった、という話です。
上記と同じですね、多くの筋肉がバランスよく働くのが理想的なのに、過度に大きな筋肉だけを使おうとする動き方を、その選手は身に付けてしまったということです。
筋肉が使われる「適切なタイミング」に関しても、事項で再度まとめます。
松野