靭帯の役割②扁平足をどう直すか
前項で靭帯の構造についてまとめました。
ここでトピックにしておきたいのが扁平足です。
扁平足は、土踏まずが落ち込み、床とのスペースが狭くなっている状態です。
簡便なチェックとして、
・土踏まずに指を入れて第一関節まで入るスペースがあるか
・後ろからアキレス腱を見て、ラインがまっすぐ縦に伸びているか
・踵の骨が左右に歪まずに、まっすぐふくらはぎの中央にあるか
などがあります。
本来土踏まずは、足のバネの役割を果たしているため、扁平足な状態はこのバネを使うことができず、非効率的な状態です。
現在では、下肢のアライメント不良から扁平足が起こることもあります。(以下参照)
もし足周辺の靭帯が緩んでしまい、留め具がない状態なのであれば、インソール(靴の中に入れる中敷)やテーピング等で関節の位置を安定させる必要があります。
改めて、靭帯の大切さがわかりますね。
Coach Y
靭帯の役割①
では次に、骨と骨をつなぐ靭帯について解説して行きます。
良くニュースでも、「◯◯選手、△△靭帯損傷」などと見出しが出ることがあります。
※「三角(さんかく)靭帯」という靭帯も存在します。)
靭帯は基本的に大きく伸び縮みせず、関節がおかしな方向に曲がらないようにガードしてくれている組織です。
前述の通り膝や肘は曲げ伸ばししかしない関節ですが、それは左右に強力な靭帯があり、動きを止めてくれているからなのです。
この靭帯、一度痛めたり切れたりすると、治癒までに長い時間が掛かり、あるいは手術を余儀なくされます。
しかし、体には筋肉と靭帯が混合しているものもいくつかあります。
代表的なのは、皆さんの太ももの外側に付いている大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)。
これは腰骨から始まる筋肉なのですが、途中で腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)に移行する珍しい筋肉です。
当然、靭帯は緩めることができないので、この筋肉をほぐすには少し工夫が必要です。
もう一つは大腿四頭筋(だいたいしとうきん)。
太ももの前に付いている筋肉ですが、骨盤から膝のお皿まではほぼ筋肉、そこからスネ前の付着部までは靭帯という、変わった筋肉です。
こちらも筋肉が硬くなってしまうと、つながる膝のお皿の周辺で痛みが起こることが多く、しっかり緩めておくことが必要になります。
具体的な解決方法は、違うタイミングでご紹介できればと思います。
Coach Y
関節物語⑤天使の羽
この項で最後にお伝えするのは、肩甲骨です。
まずは肩甲骨を含めた、肩の構造をサクッと解説します。
肩甲骨は肋骨の後ろに張り付いており、肋骨の上を滑るように動きます。この肋骨と肩甲骨の関係を肩甲胸郭関節と呼ばれています。
また、私たちの二の腕の骨(上腕骨)は肋骨ではなく肩甲骨から出ています。この肩甲骨と上腕骨の関係を肩甲上腕関節と呼びます。
私たちの腕は、胴体から肩甲骨を介して付いている、ということになります。
肩甲上腕関節がモビリティ関節なのに対して、肩甲胸郭関節はスタビリティ関節。
つまり上腕骨が自由に動き回るのを、肩甲骨が適切に制御してくれている、ということです。まるで木の幹と枝のように、肩甲骨が安定していることで、肩が存分に動くことができるのです。
ここで問題になるのが、肩甲骨をどう安定させるか、ということです。
肩甲骨は複数の筋肉で肋骨に貼り付けられていますので、筋肉が弱かったり活動しにくい状態だと、肩甲骨を肋骨に貼り付けていられなくなります。これが「天使の羽」と呼ばれる状態。つまり良くない状態なのです。
では、肩甲骨をどのように安定させるのか。
この辺りは、今後の「筋肉」シリーズで解説して行きます。
Coach Y
関節物語④体は関節で繋がっている
前項では姿勢についてまとめました。
今回は、関節同士のつながりについてまとめます。
体には多くの関節が存在しますが、一つの関節の問題が、隣接する他の関節にまで影響を及ぼすことがあります。
下の図をご覧下さい。
関節同士の関係性をわかりやすく説明してくれます。
例えば股関節が内旋(太ももの骨が内側に回る)を起こすと、膝を介して繋がっているスネの骨も内側に回ります。
すると今度は、足の骨も内向きに捻れを起こし、扁平足のように土踏まずが落ちてしまうのです。
よくスクワットをする際に、膝が内側に入ることを「Knee in(ニーイン)」などと呼び、膝を痛めやすい動作不良と言われますが、前述の通り膝は曲げ伸ばししかすることができません。
膝が「捻られて」しまう原因は、股関節や足首にある、ということが、この図からお分り頂けるかと思います。
(このように、膝は隣接する関節の影響で痛めやすいことから、「Knee is Victim(膝は犠牲者である)」などと言われたりします)
また、これを逆に応用すると、扁平足を直すために股関節にアプローチするということもできる、ということになります。
Coach Y
関節物語③正しい姿勢がなぜ必要か
前回はモビリティとスタビリティについてまとめました。
今回は「姿勢」との関連についてです。
まず、コンセプトの共有から。あなたはどちらのスタンスですか?
①姿勢を正してから、動作を改善すべき
②動作を改善する過程で、姿勢も改善されていく
我々は②をベースとしています。
姿勢改善は大切ですが、日頃の動作が今の姿勢を形作っていると考え、まずモビリティ、スタビリティの課題を見つけ、改善していくことを重視します。
腰椎が丸まらない→胸椎を中心に前屈する動作を日頃から繰り返す→胸椎が丸まる、とうい具合です。
ただし、姿勢を改善することも、以下2つの理由からとても大切です。
その理由の1つに「セントレーション」という考え方があります。
これはチェコのパベル・コラー博士が提唱した考えで、関節が適切な位置にあることで
周囲の筋肉は適切は力を発揮することができる、とする考え方です。
つまり、動きを改善していくにも、関節を正しい位置に整えることが必要となります。
二つ目の理由に、筋肉には「長さ-張力関係」というものが存在します。
筋肉には、最大の力を発揮できる長さ(「至適長(してきちょう)」と言います)が決まっており、悪い姿勢は筋肉の長さを不適切にしてしまいます。
猫背姿勢を例に取りましょう。背中が丸まって肩が前に出ると、胸の筋肉は短く、また背中の筋肉は長く引き伸ばされてしまいます。
お互いの筋肉が適切な長さから遠ざかってしまい、最大の力を発揮することができなくなってしまうのです。
胸の筋肉を鍛えるために腕立て伏せを頑張っても、それが原因で背中が丸くなってしまうと、胸の筋肉は力を出せなくなってしまう。なんとも皮肉な話です。
ここで焦点となる肩甲骨に関しては次項で。
Coach Y
関節物語②モビリティとスタビリティを理解する
では前項で触れたモビリティとスタビリティについてです。
今ではかなり公用語となりつつありますが、それぞれの関節には2つの能力が必要となります。
動かす能力(Mobile+ability=Mobility)
安定させる能力(Stable+ability=Stability)
以前までは、「それぞれの関節にはモビリティかスタビリティいずれかの役割がある」とされてきましたが、今では「全ての関節に、モビリティとスタビリティ両方の能力が必要である」と考えるのが主流となっています。
具体例を出して行きましょう。
5本の骨で構成される腰椎(腰骨ですね)。
背骨の一部なので全方向にグイグイ動くかと思いきや、捻る動きは全くできません。(左右に数度回旋する程度です)
おへそとみぞおちに指を当て、全力で背骨を捻ってみると、いかに腰椎が捻れないかが分かります。
腰椎は前後の方向(前屈や後屈)には大きく動き、それ以外の方向にはあまり大きく動くことができない、スタビリティ関節です。
動ける体を作るためには、腹筋運動よりも正しい姿勢を維持したまま体幹を鍛えるほうが良い、という話は、今では広く知れ渡りました。
ただ、動くべき方向や範囲は、しっかりと動かすことも必要です。
例えば自身の腰椎は、前屈した際に必要な丸まりが出ず、ある区間だけまな板のようにまっすぐ。これはこれで問題なのです。
そんな時には、エクササイズによって丸める動きを引き出してあげる必要があります。
まとめると、
全身の関節にはモビリティ関節、スタビリティ関節という大まかな分類があり、
また全ての関節にモビリティという能力、スタビリティという能力が必要になる、ということです。
ややこしいですが、今後も具体例を元に解説して行きます。
Coach Y
関節物語①関節はそれぞれ役割が違う
今回は関節についてまとめます。
前項の通り、骨と骨を繋ぐのが関節です。
関節は靭帯によって守られ、基本的には筋肉によって動かされます。(「基本的には」と言うのがミソです)
まずは関節には色々な種類があります。
膝や肘のように、曲げ伸ばししかできない(つまり1方向にしか動かない)関節を蝶番(ちょうばん)関節と言います。ドアについている蝶番(ちょうつがい)をイメージすると分かりやすいですね。
次に肩や股関節のように「色んな方向に動く」関節もあります。これらはとにかく色んな方向に動きます。(「色んな方向」については後日まとめます)
ちなみに、前述のような1方向にしか曲がることのできない関節をStability(スタビリティ)関節と呼ぶこともあります。
あるいは肩や股関節のように、2つ以上の方向にしっかり動くことのできる関節をMobility(モビリティ)関節と呼ぶこともあります。
こちらに関しても後日まとめます。
Coach Y